カーボントラッカーの分析により、自動車メーカーによる排出量の過少報告が
広範に存在し、投資家にとって見過ごされてきた移行リスクを浮き彫りに
ロンドン、2026年6月2日
金融シンクタンクであるカーボン・トラッカーの新たな調査によると、一部の従来型自動車メーカーは、従来の石油・ガス企業に匹敵する気候関連財務リスクを抱えている。この調査結果は、日本の株主総会シーズンを前に、ハイブリッド車への依存が続き、世界の自動車生産において大きな存在感を持つ日本のOEMにとって特に重要である。
カーボン・トラッカーによる本調査では、大手自動車メーカーが車両使用に伴う排出量を体系的に過少報告していることが明らかになった。世界の乗用車販売の80%を占める17社の主要OEMを対象に分析した結果、報告値と実際の車両使用による排出量との間に平均33%の乖離が確認された。
この「カーボン・ギャップ」は、非現実的な車両寿命走行距離の想定、プラグインハイブリッド車(PHEV)の過度に楽観的な使用想定、ならびに燃料生産段階における上流排出量の除外によって生じている。
実際の車両利用を反映する標準化手法を用いた分析により、複数の自動車メーカーが、排出量を企業価値(tCO₂e/EVIC)で割った炭素集約度ベースで、大手石油・ガス企業を上回る水準を示していることが分かった。
ベン・スコット氏 (カーボントラッカー エネルギー需要部門責任者/共同執筆者)
「自動車メーカーは将来の石油消費を左右する存在である。乗用車は世界の石油需要の27%を占めており、現在販売されるすべての内燃機関車(ICE)やハイブリッド車は、今後10-20年にわたる追加的な石油消費を固定化する。
自動車メーカーによる不適切な排出量報告は、従来型自動車企業への1ドルの投資が、多くの場合、石油・ガス企業への1ドルの投資と同程度に炭素集約的であるという現実を覆い隠している。」
先進企業と出遅れ企業
今回の分析では、自動車業界における移行戦略および排出量開示慣行に大きな差異があることが明らかになった。一部の自動車メーカーは、他社と比較して電動化への移行と透明性の高い開示において先行している。
ルノーおよびステランティスは、報告されたスコープ3カテゴリー11排出量がカーボントラッカーの推計値と最も近く、排出量透明性におけて相対的な先進企業として位置付けられた。一方、BYDおよびBMWは、ハイブリッド車依存度の高い同業他社と比較して、BEV販売比率が大幅に高かった。
これらの課題は、6月17日に株主総会を予定しているトヨタにとって特に重要である。年間1,000万台超を販売する世界最大の自動車メーカーであるトヨタは、ハイブリッド車中心の戦略を維持しており、2024年にはBEV1台に対して約27台のハイブリッド車を販売した。
マイケル・ウェルズ CFA氏 (カーボントラッカー アナリスト/共同執筆者)
「トヨタのハイブリッド車由来のスコープ3カテゴリー11排出量は業界内でも突出しており、BMWグループ全体の総排出量を上回っている。同社のハイブリッド偏重の資源配分は、陳腐化リスクを抱える技術へのコミットメントを示している。主要市場が内燃機関関連部品の全面禁止へ向かう中、トヨタのハイブリッド中心の車両ポートフォリオは、座礁資産となるリスクを抱えている。」
前田健氏(Undertones Consulting 創設者)
「トヨタのハイブリッド依存は短期的には販売面で成功を収めてきたが、同社および日本の自動車産業全体にとって中長期的な財務・市場リスクを伴う。長期的な石油消費を固定化するこの戦略は、世界の競合他社が電動化を加速する中で、座礁資産リスクを高めている。」
マツダおよび三菱自動車は、それぞれ10.2および9.9 tCO₂e/EVICと最も高い炭素集約度を示し、本報告書で比較対象とした石油・ガス企業の中で最も高いシェル(4.0)を大幅に上回った。
ゼネラルモーターズは、北米市場におけるトラックおよびSUV中心の商品構成による高い排出強度と、同業他社の中で最大級の開示不足により、業界最大の絶対カーボンギャップを示した。
スバルは最大の相対カーボンギャップを示し、米国市場における高走行距離の実態を十分に反映していない前提条件により、排出量が200%以上過少報告されている可能性がある。
地政学的不確実性と消費者ロックイン
EV移行の遅れによる財務リスクは、世界的なエネルギーショックによってさらに増幅されている。ホルムズ海峡を巡る現在の危機は、従来型自動車ビジネスモデルの脆弱性を浮き彫りにしている。ICE車およびハイブリッド車を販売し続ける自動車メーカーは、消費者を今後何十年にもわたり、高騰かつ変動性の高い燃料価格にさらし続けることになる。
このエクスポージャーは、日本の自動車業界にとって特に深刻である。日本はエネルギー供給の大部分を海外に依存しており、石油輸入の90%以上を中東地域、とりわけホルムズ海峡のような脆弱な海上輸送路に依存している。トヨタのような国内大手メーカーが液体化石燃料に全面的に依存する車両の生産を継続することは、世界中の消費者だけでなく、日本経済そのものを構造的なマクロ経済の不安定性にさらすことにつながる。
ベン・スコット氏(追加)
「ホルムズ海峡を巡る危機は、従来型車両の運転コストが決して固定的なものではないことを示す警鐘である。OEMが今日ハイブリッド車やICE車を販売するということは、単に車両を販売しているのではなく、消費者を今後15年間にわたり石油依存へ固定化しているということである。地政学的な供給ショックが深刻化する現在、輸送部門の原油依存からの脱却に失敗することは、もはや単なる環境上の失策ではない。それは消費者価値を積極的に毀損し、投資家に十分に認識されていない投資リスクをもたらすものである。」
投資家への示唆
カーボントラッカーは、不整合かつ過少評価の可能性がある排出量開示が、自動車メーカーの移行リスクおよび炭素エクスポージャーを正確に評価しようとする投資家にとって重大な課題となっていると指摘している。
報告書では、生涯総走行距離前提、PHEV利用率前提、および燃料ライフサイクル排出量に関する前提条件の違いが、スコープ3カテゴリー11排出量を大きく歪め、企業間での比較可能性を低下させることで、高排出型ビジネスモデルの誤った価格形成につながる可能性があると分析している。
ジュゼッペ(ジョセフ)・ヤコベリ氏 (Bourne Impact Capital Ltd マネージング・パートナー/actE創設者)
「多くの産業と同様に、自動車メーカーも炭素集約的な既存資産から将来的に収益性の高い資産への移行に失敗すれば、大きな財務負債に直面する。機関投資家は、この「乱気流を伴う移行局面」を乗り切るために、グリーン移行の経済的な必然性を重視し、資本の毀損や資産の座礁化を回避する必要がある。」
カーボントラッカーは投資家に対し、表面的な排出量開示だけでなく、自動車メーカーの気候関連報告を支える前提条件そのものを精査するよう求めている。特に、トヨタの6月17日の定時株主総会をはじめとする重要な株主議決や移行関連エンゲージメントを前に、こうした検証の重要性は一層高まっている。
特に、BEV販売比率を中核的な移行KPIとして重視するとともに、企業価値炭素集約度(tCO₂e/EVIC)を企業価値評価モデルに組み込むことで、炭素集約的なビジネスモデルの誤った評価を回避すべきであると提言している。また本報告書は、投資家は報告排出量のみに依拠するのではなく、BEV販売比率と炭素集約度を移行準備度を評価する相互補完的な指標として活用すべきであると主張している。
編集者向け注記
報告書『偽装された石油会社(Oil Companies in Disguise)』は、2026年6月2日(火)00:01(英国夏時間/BST)に以下のURLで公開される。
https://carbontracker.org/reports/oil-companies-in-disguise/
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Conor Quinn conor.quinn@greenhouse.agency +44 7444 696 214
Greenhouse Communications TrackerGroup@greenhouse.agency